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シンプルな会議 弁当

租税による再分配係数はほぼ安定的に推移しているのに対して、社会保障による再分配係数は上昇傾向にある。 これは、租税による所得再分配効果が年々弱くなっており、逆に社会保障による再分配効果が年々強まる傾向にあることを意味する。
もう一つ興味深い点は、社会保障による再分配効果の方が、租税による効果よりも、その量が大きいことである。 本来ならば租税による再分配政策(例えば累進税制)に国民の支持があり、社会保障による再分配政策には疑問符がつくと議論したが、わが国はその理念に反して、実態は社会保障による再分配効果の方が税制のそれよりも強いのである。
わが国の資産分配がバブル経済期(一九八○年代後半)を中心にして極端に不平等化したことを述べた。 最近では土地価格の沈静化によって、極端な資産分配の不平等はやや和らいだ。

株式についても同様のことがいえる。 しかし、再び土地価格や株式価格が上昇すれば不平等化の再現はありうる。
景気が回復すれば再びそれらの価格は上昇するだろうから、その可能性を否定できない。 もっと大切なことは、明らかにするが、バブル期は特に異常時だったことである。
そして、戦後の長期のトレンドで評価すれば、資産分配の不平等化が静かに進行していたことである。 資産分配の不平等問題は長期的な問題なのである。
所得は一定期間内に発生するフローであるのに対して、資産は一時点における評価によるストックと理解できる。 資産には大別して実物資産と金融資産の二種類があるので、それらを別個に考えてみよう。
実物資産には大別して二つの種類がある。 一つは士地であり、もう一つは住宅である。
それぞれが土地価格と住宅価格によって価値が決まり、保有面積の広さと住宅の大きさ、質によって資産額が決まる。 土地も住宅も価格が変動するので、資産保有額の変動が生じるのは当然である。
しかし住宅に関しては保有期間に応じて減価償却が発生する。 従って、住宅資産は保有期間が長くなると、その純資産額は減少する。
減価償却の推定には誤差が伴うので、住宅資産額の推計には誤差があることに留意されたい。 土地の資産額推定もそう容易ではない。
土地価格には、公示価格、路線価格、実勢価格と呼ばれるような、何種類もの土地価格が公表されており、どの価格がふさわしいのか定説はない。 本来は保有土地を売買する時の価格によって土地の資産価値を評価すべきであるが、長年にわたって売買されない土地の価格は予想に頼らざるをえない。

いずれにせよ土地の資産額推定には困難が伴うし、推定結果には誤差が相当程度含まれていると認識する必要がある。 金融資産には現金、預貯金、債券、株式等、数多くの種類がある。
それぞれに価格がついているので、金融資産価値の計測はそう困難なことではない。 ただし、預貯金では元利合計なのか、それとも利子なしの元金のみで計測するのか、株式ではキャピタル・ゲイン(株価上昇による利得)やキャピタル・ロスを含めるかどうかの計測上の問題はある。
特に利子や配当、キャタル・ゲイン(またはキャピタル・ロス)の額は申告によるところが多いので誤差があるといえる。 金融資産を統計資料として使用する場合、最大の問題点は資産額が各家計の申告に依存している点にある。
各家計が預貯金や株式の保有額を正確に認識しているのはむしろ稀である。 企業の金融資産保有額の認識度も完全とはいえない。
金融資産のデータにも誤差が大きいといわざるをえない。 金融資産と実物資産を区別する基準はいろいろある。
第一に、金融資産の売買は容易に行われるので、株式持合による株式や長期債券を除いて保有期間が一般に短いが、実物資産は当然ながら保有期間が相当長い。 一生のうちに一度も売買されない土地・家屋もある。
第二に、一商品の額が実物資産の場合は相当大きいので、売買の取引費用が高い。 金融資産の売買にも取引費用がかかるが、それほど多額ではない。

第三に、税金の役割(相続税、贈与税、地価税、固定資産税、利子・配当所得税、キャピタル・ゲイン課税等)は結構大きく、資産として具体資産保有額を決定する要因はどこにあるのだろうか。 あるいは資産保有額を説明する理論はあるのだろうか。
これらを考えることによって、資産分配がどのようになるかを予想することができるので、資産保有決定のメカ二ズムを述べてみよう。 ある一年間を考えてふよう。
今年末の資産保有額は前年末の資産保有額に今年一年間の貯蓄額を加えたものと定義できる。 従って、前年末の資産保有額(ストック)と今年の貯蓄額(フロー)に依存する。
ストック額は数量に単価(資産価格)を掛け合わせたもので評価される。 例えば金融資産である株式を例にすれば、数量は保有株式数、価格は保有株式の株価である。
従って、資産保有額の増加(または減少)は保有数量ないし資産価格の上昇(または下落)によって説明可能である。 土地についても同様に、保有土地面積ないし士地価格に依存する。
貯蓄については今年どれだけ貯蓄するかによって決まる。 資産保有額を増加(または減少)させるのは、数量、価格(利子や配当も含めて)、貯蓄的に何を保有するかの選択に影響力がある。
特に実物資産が親子間で移転される時に相続税や贈与税の果たす役割は大きく、後に詳しく検討する。 日本人の資産選択行動を特徴づければ、第一に実物資産における持ち家志向、第二に金融資産における安全資産(現金と預貯金)志向である。
第三に家計の高い貯蓄率も重要である。 これらがわが国の資産分配の特色を理解する際に重要な要因なので述べてふよう。
まず日本人がいかに持ち家率が高いかを確かめておこう。 総務庁の『全国消費実態調査』や『家計調査』によって持ち家率は簡単にわかる。

現在では七割近くの人が自分の家に住んでいるのである。 資産の変動がこの三者のうち、どの要因に大きく影響を受けているかを詳しく知ることによって、資産分配を規定する原因を知ることができる。
ではわが国の資産分配を不平等化させたのは何だろうか。 それを明らかにする前に、日本人の資産選択行動の特色を知っておく必要がある。
家に住んでおらず、低い率である。 なぜこのように高い持ち家率なのだろうか。
第一に、わが国の戦前と戦後の一時期は、大半の人が基本的に農業と商業に従事していたことはよく知られている。 農家や商店は自分の土地に家を持って、農業や商業を営むのが自然である。
しかも親から子供に土地と家が受け継がれる習慣も根強かった。 すなわちわが国の就業構造と産業構造の特色が、持ち家志向を必然的に高めていた。
ただし戦前の都会では借地・借家も相当多くみられ、今日の状況と異なっていた点もある。 第二に、わが国の土地価格の上昇率は、次に述べるように名目GDPの上昇率より高かった。
土地を保有することによって、自己資産価値を高めるのに非常に役立つので、多くの人が土地の保有を希望するのである。 土地価格は上昇し続けるという「土地神話」が生きている限り、人は持ち家志向が強いのである。

子供に遺産を残す場合にも、親は「土地神話」を信じているのである。 第三に、相続に際しての税制が金融資産よりも実物資産に有利である。

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